鎖屋兄弟のTOP CHAIN 柳瀬製作所は金属製チェーンを取り扱う町工場です。
そのため、時折、金属の性質も含めたチェーンのご質問を頂く事があります。
今回は次のような内容のお問い合わせを頂きました。
電動運搬車の装置メーカさんからのご質問で、
『床面の材質によってはタイヤとの摩擦によるものなのか、静電気が運搬車に帯電してしまいます。
その対策として現状はトラスコ社のシートを床面に垂らすことで放電させています。
鎖でも放電できないものかと考えて、一度鎖(メーカー不明)を用意したのですが、この時には鎖の表面処理によるものなのか、導電性が良くありませんでした。
そこで、導電性の良い鎖を探しています。
何か良いものがありましたら、ご紹介頂けないでしょうか。』という内容でした。
金属はどれもが一様に電気を通すわけではなく、導電性の良い金属や悪い金属が存在します。
また、導電性の良い金属であっても加工性に乏しいものだと製品に加工する事が出来ません。
特にチェーンの場合には、その金属が長い線状に加工された線材として流通していることと、曲げなどの加工に耐えられること。
そして次工程である溶接処理やその後のメッキ処理にもしっかり対応出来る事が必要とされます。
これらの条件だけでも、チェーンに加工出来る金属は大幅に限られてきてしまいます。
あとは材料となる線材がどれだけの価格でどれだけの量から入手可能かに懸かってきます。
中国でのオリンピックや万博開催に伴う大型需要のあおりで2000年代中頃から金属価格はどれも軒並み数倍にUP。
その後下落に転じたとはいえ、それ以前に比べるとかなりの高止まりです。
そしてアベノミクス以降は、ずっと上昇傾向が続いています。
いずれにしても材料購入量をある程度要求されますので、試作や少ロット対応は価格面で折り合いがつきません。
その打開策として、協力会社が製造製品としてラインナップしている商品を分けてもらう形になるのですが、いずれの協力会社でも過去の金属価格上昇以後は採算が合わず、製造品目を大幅に減らしたり、弊社と同様にその金属材料での製造を終了したりといった具合で、なかなかご希望に添える商品をご提供する事が難しい状況です。
残念ではありますが、以下のようなお返事を差し上げる形となりました。
この記事をお読み下さった皆様には、導電性の良い金属と、チェーンの構造的な性質を知る上での参考として頂ければと思います。
「この度はお問い合わせを頂き有難うございます。
導電性が良い(電気抵抗率が低い)金属製のチェーンとしましてはAg Cu Au Al が存在しています。
Ag Auについては宝飾系の分野となります。
一般用途としてはCu Al がございますが、現在弊社での製造はございません。
協力会社への委託になるかと思います。
また、Cu Al 共に素材自体の導電性は良いのですが、メッキやアルマイト加工などの表面処理を行った場合の導電性の変化は不明です。
表面処理を行わない生地での場合につきましても、空気に触れている都合上、酸化が起こってまいりますので、これによる導電性の変化も考えられます。
チェーンの構造的な面では、チェーン形成時には各コマに切れ目(隙間)が存在しています。
用途(必要強度)により、この切り口部分の溶接の有・無のチェーンが販売されています。
導電性への影響という点では軽微かと思われますが、選択での検討項目に加えられても良いかと思います。
弊社では鉄製とステンレス(SUS304)でのチェーン製造を行っております。
残念ながら素材の導電性ではCu Al には及びません。
Cu Al は金属としては比較的やわらかい素材ですので、磨耗性の面では鉄製・ステンレス製を考慮頂ければと思います。
ご検討の参考として頂ければ幸いです。
有難うございました。」
モノづくりをする零細には依然として厳しい状況が続きますが、どの業種でも一度消してしまった火を再びつけることは非常に困難な状況ですので、<国内生産品>を減らさぬように頑張って行きたいと思います。
鎖屋兄弟の TOP CHAIN 柳瀬製作所 への応援、宜しくお願い致します。